Debbie Reynolds ダンススタジオ
- [ Post Date ]
- 2008/08/07
- [ Category ]
- 身体・性・舞踊
7月24日(木)
数日間だが、娘がロサンゼルス郊外のDebbie Reynolds ダンススタジオでレッスンを受けた。当初は私もレッスンに参加する予定だったが、車の運転が予想以上に大変だと知り、このスタジオへの行き来の、往復80分の(高速道路含め)運転は、レッスンでへとへとになっては危ない。しかたなくレッスンは諦めた。レッスンルームのすみに座り込み、私は見学に徹する。でも、見ているだけでも感動の連続!
このスタジオ、創設者は「雨に歌えば」などで有名な女優のDebbie Reynolds。ちなみに、この方は「魔女の宅急便」に声の出演もされているんですね。
ハリウッド映画や、アーティストたちの幾多のダンスシーンを作り上げていった伝統あるスタジオだ。マドンナ、アッシャー、マライア・キャリー、ブリトニー・スピアーズ、ビヨンセ、ジャネット・ジャクソンらの振り付けをしたような一流のダンサーたちが、すてきな振り付けのダンスを指導してくれる。
スタジオの廊下は、Debbie Reynolds の出演したハリウッド映画のポスターがたくさん貼られ、古風な雰囲気をあえて残していると思う。タップダンスやバレエやジャズ中心から、今のHIPHOP中心にと、このスタジオはダンスシーンの変遷の現場だったのだろう。時代の変化に、とても敏感で柔軟なスタジオのようだ。
一日数コマ、連続してレッスンに参加。プロのダンサーを目指す人たちがたくさんいる様子で、優れた才能あるダンサーたちの鍛錬を目の当たりにできた。日本人も、どのクラスにも数人はいて、ダンス留学で一年以上修練している方もいる。レッスンのレベルの高さには、降参してしまった!1時間のレッスンで、かなり複雑な振りを、基本的に8エイトずつ新しくやっていくのだが、レッスン生のほとんど全員が、1時間の終わりには、それぞれの個性的なダンスに消化してしまう。娘はついていくのに必死!レッスン生はこれを毎時間続けていく。ダンスの滝行のようなものだろう。
先生とレッスン生との、ダンスの趣向、性別の割合、人種の割合など、客観的にみていると発見が多い。HIPHOP系ダンスでは、やっぱり黒人の先生の人気が高い。私が見ていても、大きな身体の黒人の先生の、コミカルな動きや意外なほどの繊細な動きなどにはとくに、ぐっと心を掴まれてしまう。先生方の人気により、レッスン生の数は20人から60人くらいまで幅がでている。
(写真はFree先生と娘と私。Free先生は、日本にも3、4年滞在し、芸能界で、スマップらにも教えていた方。)
面白いことに気づいた。黒人の先生のレッスンに限って、黒人の若者たちがどっと参加して人数が増える。そしてこの若者たちは、白人のレッスンには出ないし、レッスン生の休憩室やシャワー室などは利用しない。この若者達は、ストイックな気迫をもって、生まれたときから踊っていたというような身体でダンスする。はじめは、黒人の若者は黒人の誇りゆえに、白人HIPHOPのレッスンには参加しないのかな?、と思ったが、そうではなようだ。彼らはたぶん、安くはないレッスン料は払わない、もぐりの生徒なのだろう。黒人同志のネットワークがあり、黒人の先生方は知り合いの若者を自分のレッスンには参加させてしまう。スタジオ側ではそれを禁止するわけにもいかない。それを許してしまうところが、このスタジオの柔軟性であり、新しいダンスをはぐくむ土壌となれるところなのかもしれない。
低階層で上昇の機会のとぼしい黒人にとって、バスケットボールと並んでいま、HIPHOPダンスやミュージックは階層移動の非常に希少なルートである。ロサンゼルスでは貧困層の黒人たちはサウスセントラルという地区に多く住んでおり、車をもたない彼らは、公共の交通機関しか使わないので、そのゲットーの外にはでにくい。サウスセントラルの住人にとって、このスタジオがある北ハリウッドまでの移動も、容易ではないと思える。成功者である黒人ダンサーや振り付け師の人たちは、黒人コミュニティ内の身内や知り合いを助けようと、たぶん車の手配も含めて、いろいろと便宜をはかってやっているのだろう。
日本でも流行ってきているHIPHOPの新しいスタイル、「Krump」も、ロサンゼルスのこの貧民街で生まれたものだ。ドキュメンタリー映画「Rise」(2004年)は、Krumpの誕生から興隆の過程に肉迫している。Krump。激しく自己主張する、ダンスのバトルだ。両腕を激しく掻くように動かし、腰を力強く振る情熱的なダンス。どれだけその人の生き方に迫力があるかが競われる。ジャッジは観衆だ。
「Rise」にも登場する、Krumpの女王、Miss Prissy(写真)もここで教えていて、そのレッスンにも参加する幸運に恵まれた!娘も大興奮。
Miss Prissyは確信をもって、いい動きと悪い動きを指摘し、非常に丁寧に振りを説明してくれた。激しいKrumpの動作のひとつひとつが、いっぽうでどんなに繊細な配慮でなされているか、教えられた。
彼女は偉ぶらないが、とても威厳があった。身体ひとつで踊るほかには何ももたない貧民街の女性が先生となり、白人たちや留学してくる日本人に、心から尊敬される、とても感動的な光景があった。妊娠中だというのに、Miss Prissyは危ないくらいの激しい振りもやってくれる。「妊娠中の私でもできるんだから、あなたたちもできるわよ。」
麻薬や銃や失業、貧困、差別・・・。黒人貧困街では、毎日が人間として否定されるような体験の連続。「Rise」にも「お母さんは、今刑務所」「おにいちゃんは、道を歩いていて銃で撃たれて死んだの」なんていう話が普通に語られている。
それでも、「私は生きている」と主張するのが、黒人貧困層のHIPHOPダンスだ。ダンスがなければ、ギャングになったり麻薬に溺れ、自分の人間性のすべてを腐らせるだろう。ダンスによってのみ生きていける、ダンスによってのみ「私」の価値を主張できる。どん底から甦生してくる黒人が、ダンスの真髄を、先進社会の若者たちに伝えている。
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- 2008/08/07
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