LAS VEGAS ショーの身体
- [ Post Date ]
- 2008/08/09
- [ Category ]
- 身体・性・舞踊
7月28日(月)
ラスベガスは今、カジノ中心の街から、ショーやエンターテイメントの盛んな街へとシフトしている。テーマホテルには、巨額な資金をつぎこんだ特設劇場が設けられて
いるところも多い。それはやはりカジノ収入があってこそ可能なのだ。連日さまざまなショーが目白押しで上演されている。家族向けから非常に芸術性の高いもの、ナイトショーまで。
MGMグランドホテル内特設劇場の、シルク・ドゥ・ソレイユの『KA』を観た。
舞台装置、舞台美術、演出、演技、すべてにおいて、圧巻。
ショーにおいてこれ以上の水準は私は考えられなかった。どんな細部も、もっと目新しく、もっとあでやかにできないかと、これでもか!!というほど工夫されている。
まず、舞台の床の下に巨大な装置があり、床全体が回転、傾斜、昇降を自在にできるのだ。こんな床、誰が考えだしたのだろう!? しかもその床はただの板
ではなく、何通りもの表情を見せる。あるときそれは砂浜で、埋まっていたヒトデが出てきてコミカルな踊りを見せたりしてくれる。と思うと、次の場面、砂浜は傾斜して、
大量の砂はすべて舞台下に滑り落ちてしまう。砂の落ちた床板は、今度は手の影絵を投影するスクリーンになる。ぬくもりのある影絵のひとときの後、しかし、床
板はハイテクの仕掛けを発揮して、観客を驚嘆させる。デジタルの巨大スクリーンでもあるのだろうか、斜面になった床板を人がよじ上っていくとき、人
の手のあと、足のあとが、ふわん、ふわんと現れて波紋のように広がる模様を描き、その波紋どうしが複雑にからまりあい、照明もあいまって信じられないような幻想的な美しさを見せる。
傾斜が最大になったとき、舞台はもう、完全に屹立する巨大な「壁」になってしまう。床が壁に!その壁に敵がつぎつぎ矢を放つと、つきささった多数の矢を手がかりに、たくさんの役者たちはアクロバティックに回転しながら、まるで自然現象のように優美に降りていく!
こんなものを観てしまうと、スーパー歌舞伎とか、コマ劇場とか、ローテクすぎて気が抜けてしまう。舞台装置を打ち出そうとしたら、この先端は意識しなくてはならない時代なのだ。
シルク・ドゥ・ソレイユは、ラスベガスでこのほかにも『O』と『LOVE』という、また別種の趣の人気のショーをうっている。ラスベガスでも、その舞台や演出が、突出した劇団だ。
そしてシルク・ドゥ・ソレイユの役者たちは、このハイテクに適合する、スピーディな超絶技巧を軽々とやってみせる。オリンピック元選手、中国雑技団の出身者たちも多いという。
蜘蛛が糸を難なくのぼるように、大輪の花が一気に開くように、ハムスターが回転台をくるくる駆けるように・・・、どの役者の芸も、自然現象のように無理がなくて優美だ。
(次の晩にみた、Excaliburホテルの地下特設劇場にてのディナーショー「トーナメント・オブ・キングス」でも、中世の王様たちは白人青年たちだが、道化師、軽業師たちは中国雑技団出身者らしかった。)
これまでのサーカスの、ちょっとうらぶれた、あばずれた、悲しい役者人生が透けて見えるような芸は、シルク・ドゥ・ソレイユのものとは異質だ。現実 世界での悲しさなどは、ラスベガスでは表してはならない。ここで歓迎されるショーとは、非日常的な夢の世界の住人のように、完璧に優雅に、苦労なしに離れ業をやることで、シルクはそれを完全にやっている。私が東京で観た「マッスルミュージカル」みた いな、がんばりながら離れ業をやるのとも、ずいぶん違う。
うってかわってPlanet Hollywoodの小劇場。ここでToxic AudioとUltimate Variety’V ’のふたつのショーを観た。お客は100人くらいか、舞台と客席の距離がとても近い。どちらも「客いじり」がうまくて、大笑いさせてくれる。このVのメイ ンキャラクターはジャグリングの芸人だが、もう、こういう素朴な芸は、自嘲することで笑いをとり、『KA』のような舞台のある時代に生き残ろうとしている。 彼は、『KA』みたいなのがある中で、よく自分達のショーに来てくれましたね、とお客に感謝した。「ふっ」と力の抜けた笑いをし、「舞台が縦になるのよ!・・・僕なんて、・・・たったボール3つ」。お客はこれで笑ってしまう。彼はわざわざ自分の双子 の子どもの写真を大写しにし、お父さん似だ、お母さん似だ、といってほのぼのとした気持ちにさせてくれ、大舞台の非日常感とは違う、身近なあたたかさを魅力にしようとしている。
Vの身体芸に、男の頭の上でもう一人の男が逆立ちしたり、などもあったが、この芸人はロシア出身やインド出身で、中国雑技団よりもがっしりした重い 身体だった。逆立ちひとつも、ぎりぎりと重い身体をもちあげていき、ぶるぶる筋肉がふるえるのが間近で見える。中国雑技団のように身軽に楽々と芸をしないことで、逆に、観客はハラハラしてスリルを味わえる。小劇場の場合、芸を大変そうに見せたほうが面白いとは。でもそこまで計算されていることにも感心。
とにかく、激烈な競争が日々続くのがラスベガスのショー世界だ。少しでもお客の入りが悪くなると、すぐにおろされてドサ回りに移るという。どんなテーマホテルの、舞台装置の舞台も、しのぎを削っている気迫が魅力だと思う。
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