名残の茶事
- [ Post Date ]
- 2008/10/26
- [ Category ]
- 舞えや謡えや
10月26日(日)
秋深まるこの日、名残の茶事の亭主をさせていただいた。
場所はお茶の先生のお茶室。
私のお茶の先生は、茶道の本質はお茶事にあるとおっしゃる。しばしばお茶事をもよおされ、ご自分は、実際にはお道具選びからお懐石料理まで全部してくださりながら、表向きは半東(お手伝い)というお立場をとられ、弟子に亭主役をさせてくださる。その懐の深さよ。
お茶の新年は11月で、炉開きをし、その年の新茶をはじめていただく。それに先立ついま10月は、親しんできた風炉釜と、前年のお茶とに名残りを惜しむ季節で、侘びた風情を味わうのだ。
私も御懐石やお道具の準備などにはたらきながら、五人のお客さまをお待ちした。
お正客の和尚様がまずいらっしゃった。すばらしい書家でもある方。それから次々お客様が到着される。この日のお客様は、長年お茶杓を作られてきた方、陶芸家、革工芸の作家、鍼灸で一流を築かれた先生、と、みなさま高い志をもって道を探求されてきた方々の勢ぞろいだった。
うてば響く感性と、幅広い文化への造詣。ひとつの話題が、御懐石のあいだにも、面白いように展開していく。阿波の文楽のお話、能の面、加藤唐九郎の茶碗のあじわい、高取、唐津、膳所焼などなど窯元のいろいろのお話。
こんなに豊かな精神の遊びを知れて、私は幸せだと思った。60代から80代のお客様がたが、いろいろな文化の領域での、出会いの驚きや感動を子どものように夢中で語られている。ひとつの領域での感動が、ほかでの感動を連鎖的に思いださせる。
お道具拝見で焼き物をめでながら、陶芸家の方が楽しそうにおっしゃる。「うっとりするような壺を作ろうとするとき、女性のお尻をいやというほど撫でて手で覚えるんだよね。それで壺を作ろうとするんだけど、手で覚えたとおりに土を撫で上げると、重みで垂れてきてね。」一同は大笑い。それから、美女のようにスタイルのいい茶杓のお話に。そしてまた、観世左近の能の「羽衣」が、幅のある御身体でありながら軽々した天女に見えた不思議さのお話にも。
コラボの即興演奏。なんと奥深い一座建立だったことだろう!
こういう出会いの響きあいは、お茶の社会でもそうそうあるものではないらしい。
遊びをせんとや生まれけん。
一生懸命に勉強して到達するよりも、もっと楽しくひろびろと充実した世界に、ほんとうの遊びは到達できるのだろう。
私は、先週、お茶名をいただいたばかりなのだった。
お名前はいただいたが、それこそ名ばかりで、実質を作るのはこれからだと痛感している。いまようやく、お茶の世界のひととおりをざっと案内いただき、お茶の門口に立って、これから入ろうとするところだと思える。
お茶名をいただいたとは、これから自分のお茶を作っていくことだと、先生はいわれる。お茶の世界での自分の価値観とスタイルを、時間をかけて確立させていくのだ。
私は、出会いの即興演奏をこそ、大事にしていきたい。
出会いに遊ぶことほど、奥深い喜びはないと思う。
今日の会記を記しておきます
10月26日(日)午後3時 処:悠庵
茶会名称 名残 夕さりの茶事
寄付 床 「明月松間照清泉石上流」仲埜書(中国の書家の方)
香合 輪島塗月に薄
汲出茶碗 萩焼 十二世坂高麗左衛門作
懐石 飯 汁:粟麩・辛子 向付:焼き松茸・水菜・かぼす 焼物:秋鮭
椀:湯葉・春菊・柚子 煮物:湯葉・蓮根・里芋 進め鉢:春菊・えのき茸・菊
吸い物:松実・金松梅 八寸:牛蒡・サーモン 香の物
本席濃茶 床 「天無門地無戸」大徳寺福富以清老師書
花 季のもの
風炉 信楽
風炉先 杉木
釜 雲竜釜
水指 高取焼
茶器 膳所焼 岩崎新定作 耳付勢高茶入 袋 大阪蜀江文
茶碗 萩焼 替 佐渡焼
茶杓 加茂田竹泉作 銘「桂姫」
建水 曲
茶 奥昔 上林
菓子 栗きんとん
器 杉
薄茶
棗 月に薄鈴虫文様 金輪寺棗
茶碗 笠間焼 替 京焼秋草文平茶碗
茶杓 加茂田竹泉作 銘「月影」
菓子 麩の焼き 吹き寄せ干菓子
茶 青松の寿 青松園
器 杉
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