風薫る

[ Post Date ]
2009/05/08
[ Category ]
日々のこと

緑の色が日に日に濃くなり、草たちが一せいに伸び茂る。この季節、さまざまな花が香りをはなち、街路を歩きながらふと足をとめることが多い。藤の花、薔薇の花、夏蜜柑の花、卯の花の匂う垣根・・・。

まぶしい陽をうけて薫風にふかれるこの季節、旬のたべものにも香りの高いものが多い。山椒をたくさん使ったお豆腐の田楽、たけのこご飯、熊笹で手作りしたちまき、新茶・・・。大事にしたい。春の苦さとは違う、初夏の香りは若い生きものたちの溢れる勢いだ。
こんな香りは、内臓に記憶され、ふと、ありありとここにあるように、よみがえることもある。

最近思い出すのは、「朴葉飯の香り」。秋の「朴葉味噌」で有名な朴の葉。茸と味噌と木の実を、朴の葉にのせて下から炭火で炙って焼くと、焼き味噌に朴の香りが移る。
でも朴の葉は、五月の青い緑のころ、秋とは比べ物にならないくらい香りがいい。30センチくらいの大きさに育っているが、秋の葉とは違い、薄くしなやかで、食べ物をくるんでも折れたりしない。
朴の木の高い枝から、竿で葉を落として、田舎の祖母が以前はこの季節、よく朴の葉を送ってくれた。母に教えられたとおり、あつあつの炊きたてのご飯を軽くにぎり、黄な粉をまぶすといそいで朴の葉に包む。手早くいくつも包んだものをひとまとめにし、全体をかわいたきれいなタオルでくるみ、ご飯の熱で朴葉がむれるようにしばらく置いておく。すると、朴の香りが、黄な粉の香りと一体になってご飯に移り、葉っぱをひらいていただくと、湯気とともにふわっとこおばしく若々しい香気がひろがり、喉から頭にたちのぼる。
農家ではちょうど田植えの時期。重労働をすると昼食前におなかがすいてしまう。昔は10時頃の「小昼」に、この朴葉飯はよく食べられたという。田のあぜで開けばなお美味しいだろう。
以前、子どもの幼稚園のお弁当に持たせたこともあったが、葉っぱにくるむ素朴さに子どもも喜び、先生も珍しがってくださった。

五月の朴葉の香りの記憶は、人が生き生きと伸び、はたらく勢いをもっぱら連想させてくれるのだ。

[ Post Date ]
2009/05/08
[ Category ]
日々のこと
[ Trackback ]
http://www.typepad.com/services/trackback/6a0128758a7294970c0128758a7358970c