Londonの人々 演じる身体
- [ Post Date ]
- 2009/08/26
- [ Category ]
- 身体・性・舞踊
2009年8月25日
8月末、約一週間の予定でLONDONとNEDERLANDに来ている。LONDONではこの時期LATIN FESTという大きなペアダンスの祭典が開かれる。そこに集う世界中の人たちと踊る修練などが目的だ。
昼はクラスもないので、たくさんの博物館などを見学する。そこで本当に感心してしまったのが、LONDONの人たちの「演じる力」の見事さだ。
LONDON DUNGEON という、中世から近代までの史実上の恐怖の出来事を再現した、体験型アミューズメント施設があって、たいへんな人気だ。昔のロンドンの街路や、牢獄や裁判所などに入場者たちは導かれるのだが、その恐怖体験の本質は、当時の人物に扮装したスタッフの迫真の演技だ。
黒い衣装に身をつつみ、隈のある青ざめた顔で客をにらみつける女性スタッフ。嘘だとわかっているのに誰も笑えない迫力がある。拷問、裁判、ロンドンの大火、外科手術、切り裂きジャック・・・各コーナーを担当するのはたった一人のスタッフで、20人ほどの客たちの前で、その恐怖の出来事を語りながら、当時の現場に客をひきこんでいく。客とやりとりをしながらの演劇のライブだ。豊かな発声、タイミングのセンス、やりとりのうまさ。外科手術の部屋では、恐ろしい語りの最中に真っ暗に灯りを消し、次の瞬間、ティーンの女の子二人組の目の前に恐ろしい表情をつきだして、灯りをパッとつける。「キャーー!!」女の子は絶叫してしまった。もちろんそのあと皆笑ったが、なんだか恐怖が尾をひいていく。
すごい役者がそろっているなあ!と感嘆。
日本では真似できないだろう。扮装をする、というとコスプレが盛んだが、日本人はまったく身体が動かず、ポーズに固まってしまう人が多い。のどを絞めた小さい声しかだせない。コスプレしてかつ演じる身体には、程遠い。
ちなみに、これに感心したので、私は数日後AMSTERDAM で類似のDUNGEONに再び入って、比較してみた。こちらはAMSTERDAMでの史実に基づいた、やはり恐怖体験の館。魔女狩り、裁判やペスト、外科手術などが続く。
役者を比べると、中には優れた人もいたが、やや劣る人たちが多い。観光客むけに3カ国語で語っていくのも大変かもしれないが、発声が細いし演技に迫力が欠ける。LONDONのは恐ろしすぎるので10歳以下は入場禁止だが、AMSTERDAMのは年齢制限なしだ。
さて、LONDONのさまざまな博物館で、案内をしてくれるガイドさんたちも、またすばらしい役者揃いだった。日本にもミュージアムガイドというボランティアが最近はいるが、「解説者」であって「役者」ではない。でもここでは、展示物が当時どのように使われたか、何が起きていたかを、語りで生き生きと再現する、一人舞台の役者なのだ。おばあさんのガイドさんも若い女性や男性のガイドさんも、説明が真に迫ってわかりやすかった。(写真は外科手術博物館で、子ども達に医者や患者の役をさせながら、説明しているガイドさん。)
日本ではプレゼンテーションというと、パワーポイントをつかって要領よく情報伝達することだけが、重視されているが。ここでは何の文字資料も用いず、語りとしぐさだけで、人の現実のさまざまな層を伝える。このプレゼンテーションのスタイルは、私には教師として非常に勉強になった。
イギリスのTV番組を見ていて、子どもたちがたくさん登場し、立派に役者を務めているのにも驚いた。子ども向けの昔話のコーナーでは、何十分という長編物語で「むかしむかし・・・」という語りを、子どもが抑揚たっぷりに見事にこなし、演者も全部子どもたちだった。子どもの演劇教育も行き届いているようだ。子どもに演劇を教えるための、教師のワークショップもいろいろと行われているようだ。
演劇やミュージカルの看板は、街のあちこちで非常に目に付くほど大きく数も多いし。LONDON以外のイギリスはよくわからないが、演じる身体という心髄をもっている人たちなのだと感じられる。
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