甲野善紀さん古武術講座

[ Post Date ]
2009/09/07
[ Category ]
身体・性・舞踊

9月7日(月)

ゼミ生や格闘技サークルの学生達と、綾瀬の東京武道場で開かれた、甲野善紀さんの古武術講座に参加した。
50人ほどの参加者に囲まれて、甲野さんは今、ご自分の取り組まれている技や術を、参加者相手に示されたり、参加者の質問に答えながら次々に関連する技を見せてくださったりし、プログラムなど全くない状態で、終始、即興の講座を展開されていった。

よく知られていることだが、甲野さんの技も、身体遣いも日々進化し、変化しているので、甲野流の「型」があるわけでもなく、基本稽古があるわけでもない。また、通常の武道の世界と全くことなって、師弟の上下関係もないので、今回も甲野さんが「教えてくださる」ものではなかった。
参加した学生の一人は、「もっと丁寧に教えて下さっていたらわかったのに」と後で言っていたが、もちろん「これがわからないから、もう一回教えていただけますか」と請わないこの学生の消極性がいけないのだ。自分から疑問をもって学び取ろうとする者だけが学べる、素晴らしい講座のやり方をなさっている。

普通の武術の動きをまず数回示し、その直後に、より俊敏な古武術の動きを示していかれる。普通の武術の動きなら、相手役になった参加者も防御できるのだが、その直後に、何が起きたのかわからないが、全然防御の効かない技をかけられて、あっけにとられることになる。誰一人、どの技でも、甲野さんの技をかわせる人はいなかっただけでなく、何が起きているのかわからず、普通の武術の動きとどこが違うのかも判別できないことも多い。
甲野さんは、私にご自分の左腕をつかむように言われた。片手でしっかりつかんでみると、きもちが悪いほどぶよぶよに脱力し、まるで自力で動けない痴呆性老人の腕だ。
とその瞬間、脱力しきったはずの腕は目にも留まらぬ速さで動き、私の腕を逆につかんでいた。「ひやあ!」不意をつかれて私は声を上げてしまった。心臓が驚きでドキっとする。甲野さんは当たり前のように言われる。「脱力していても、腕の芯だけに細い緊張を残すんですね。」

有名な「平蜘蛛返し」も、参加者の一人がリクエストするとやって下さった。渾身の力ではいつくばる100キロの参加者も、一瞬でひっくりかえる。柔道の寝技にこれをかければ、寝技はまったく成り立たなくなるはずだ。今の柔道界全体をも、甲野さんの身体遣いはひっくり返すはずだが、しかし、柔道界で甲野さんに学びにくる方は、よほど特殊な個人を除いていないのだという。

介護の技術の数々も見せていただく。寝たきりの人をわずかな力で起こす技。寝返りを打たせる技。座り込んで立てない重い人を立たせる技。参加者が「こうですか?」とやって見ていただくと、的確なコメントを下さる。
ギターの構えについての質問をした人には、その場で瞬時にアドバイスをなさる。

身体について、有意義なご意見も多くうかがえた。
右利きだと思い込んでいる人で、実は左利きの人はたくさんいること。その調べ方。
「成長期の女の子にとって、バドミントンとバレーボールっていう、膝に負担のかかる動きは、もっともよくないですね。」生殖機能の成長を阻害するという。「男の子にも女の子にも、できればそんな動きはさせないようにして、もしどうしてもやりたいなら、よほど膝自体を強くしてから、無理ない範囲でやらせるといいですね。」場所がなくても膝を鍛えられる方法も、教えてくださる。

私も質問した。「甲野さんのような動きをなさっていると、腰痛にはならないと思うのですが。でも、いかにも腰痛になりそうな動きでなくても、ちょっとしたことで腰を痛めることがあるのは、何がいけないんでしょうか?それと、どう違うのでしょうか?」
甲野さん「いや・・・、腰を痛めることありますよ。腰痛は6割が原因不明っていわれてますね。今日のような受講料を自分で払った方たちだと理解しようとしていいんですけど、まったくこちらをわかろうともしない、義務で集まってきたような人たちの前で講習をすると、腰を痛めますね。」
このお答えは面白かった。腰痛には心理的要素が大きいと最近外科医学でもわかってきたし、腰を強くするには「やりたいことを、すぐにやる」生活が大事だというが、甲野さんほどの巧みな動きをなさっていても、関係性の問題が原因で、腰痛になることがあるとは!

女性二人で参加された方のひとりが甲野さんにいう。「あのうー、失礼ですがいっぺん甲野さんの背中を見せていただきたいんですが・・・。」
「いいですよ。」甲野さんって、なんてサービス精神がおありなんだろう!たちまち上半身を脱いでくださった。
「わあー!!」その女性二人と私とは駆け寄り、背中に触れさせていただく。肩甲骨を動かしてくださるが、その可動性の大きさはこれまで見たこともないくらい。身体中、大きく雑な筋肉の塊ではなく、もっと細かなでこぼこで、どの小さい部分も独立して動きそうな息遣いをしている。「わあ!すごい!」ちょっと遠巻きの男性たちを尻目に、私達女性三人はキャーキャー騒いでしまった。
「みぞおちも柔らかいですよ。」と甲野さん。今度は胸側を向けてくださるので、女性三人は次々とみぞおちに手をいれさせていただく。わっ!私の四本の指はずぶずぶと、何の抵抗もなく甲野さんのみぞおちにはまっていき、手の甲のあたりまで埋まってしまった!こんなに緩んだみぞおちも、初めてだ。まるで背中まで、突っ込んだ手が届きそう。女性達は興奮して大騒ぎ。
すると甲野さんは、ご自分の手のひらは、縦に折れるくらいによく曲がること、足指の関節が、第一関節で直角に曲がるほど柔軟なことなども見せてくださる。
本当に驚いた。これまで接したことのある身体とは、まったく次元が違う緩みと柔軟さだった。
稽古会に長く参加している方によると、甲野さんは椎骨のひとつひとつも、半端でなく大きく動かせるのだという。
勇気のある参加女性の方のおかげで、甲野さんの御身体に直に触れさせていただき、貴重な発見ができた。

筋トレや、一般のスポーツトレーニングで作った、動きの悪い、がちがちの身体と、どんなに根本的に違うことだろう!やはりそういう身体になってしまうと、頭の発想も悪く、がちがちになるように思う。

謎と驚きと喜びで震えた。

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2009/09/07
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身体・性・舞踊
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