レポート紹介「性の身体コミュニケーションの現在」@明治大学2009後期「情報コミュニケーション学入門D」
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- 2009/12/14
2009年12月1日発表
11月10日(火) 明治大学和泉校舎での、オムニバス式授業「情報コミュニケーション学入門D」の平山担当回のレポート紹介をします。
受講した方、質問を書いた方、お待たせしました。
考察
●「人間には発情期がなく、人間にとってのセックスはコミュニケーションであるという話にはなるほどと思いました。」
●「少子化や草食系などはすべて、性コミュニケーションへの関心の欠如が原因となっていると思われる。日本人の国民性が他者とのコミュニケーションを苦手とするせいだと思われる。生身の他者とのコミュニケーションが促進される必要がある」
●「小学生の時、ブラジルから来た男の子がいたのですが、運動会の時に男女で手をつながなければならない時に、周りの子は恥ずかしがってなかなか手をつながなかったのに、そのブラジル人の子はすぐ手をつないでいました。すごくびっくりしましたが、今回の授業で外国人と、身体コミュニケーションにおける意識が違うとわかって、納得しました。」
●「(海外のアダルトビデオなどを目にすると・・・)日本人と外国人の満足、幸福感のベクトルというか方向性が違っていると思う。外国人は失礼かもしれないが大雑把なセックスをするのに対し、日本人は繊細なセックスを求める。そのようなことから、日本人の方が女性に満足感を与えるのは、どう考えても難しいのだ。」よい着眼だと思いました。確かに日本人の感性は繊細で、かつてはそれを十分に生かした性の文化が開花していました。江戸時代の村落で年長者からおこなわれた手ほどきも、非常に懇切丁寧なものだったそうです。経験や修練があれば、繊細で非常に深い、性的交流が可能なのでしょう。
●「今のメディアや大人が取り上げる性の情報は、悪い面を伝えるものばかりだと思う。私も実際性行為はあまりしないほうが良いものだと、この授業をうけるまで思っていた。もっと周りに流されないで、自分なりに、性行為に偏見をもたずに幸せを得たいと思った。」
●「性に関する幸福をメディアが伝えることはない。しかし性に関する不幸は数多く取り上げられる。特に強姦、痴漢・・。すると日本には幸福な性より不幸な性の方が多いように思えてしまうのではないだろうか。」
●「・・・私は今、遠距離恋愛をしていて、彼を五感で感じることができないのはとても悲しく、久しぶりに会うと、さわれることのうれしさをものすごく感じる。テレビ電話SKYPEで、顔をみて会話できるが、そんなものではがまんできない。現代の人間は、よく二次元の恋愛でがまんできるな、と思うしだいだ。」
●「印象に残ったのは、男性は緊張の快を求め、女性は弛緩の快を求める、という言葉です。男性と女性、求め合うものが違うなかで、どう調和していけばよいのか、とても考えさせられました!」複数の学生が同様の意見を書いていました。
●「正直いやな気持ちになった。授業内容には明らかにアニメ、ゲーム、オタクに対する偏見があったし、オタクじゃなくてもああいう体型の人はたくさんいると思う。しかもそんなことを調べにいくために、わざわざ有明のコミケまでいくとか、ひやかしもいいところだと思う。別に僕はセックスに価値を求めないし、感じない。」
●「性行為をするということは、次に何かをする「やる気」につながる。それが減少傾向にある現在、どんどん「やる気」が減って、経済、政治にも影響を与えかねないものであると感じました。」
●「セックスの回数、満足感が他の国々と比べて非常に低いのはわかったが、比較は重要だろうか。日本は経済的にも生活の質的にも、他の国々と比べても上位にいると思う。セックス以外に熱中できるものがあるのは豊かな証なのではないだろうか。」まず、授業で国際比較をおこなったのは、「日本もセックス回数でグローバルスタンダード(?)に近づかなければ」と主張したかったからではありません。自分の性のありかたに漠然と違和感をもつ人にとっては、現代日本人の性意識・性行動を相対化することが、現実を変える力になると考えたからです。そして、漠然と違和感をもつ日本人は今非常に多いです。現在の性のありかたに満足しているならば、勿論変える必要はないと思います。
質問
●「昔は、恋愛、結婚、性の三位一体の考えが成り立っていなかったなら、浮気、不倫といった概念も存在していなかったという事なのでしょうか?」
不義、密通、不埒という概念はありました。身分でいうと武士は婚姻外性関係に比較的厳しかったです。また、カップルの、相手に対する愛着や嫉妬などもありましたから、貞女がほめられたり操が尊ばれたりはしました。その関係性の実際については、ここで簡単にまとめきれませんので、自分で調べてみることをお勧めします。氏家幹人『江戸の性談』講談社文庫、宮本常一『忘れられた日本人』の「須磨源氏」岩波文庫、赤松啓介『夜這いの民俗学、夜這いの性愛論』ちくま文庫 などが、まずは手に入れやすい文献です。
●「今回の授業で、明治~終戦までの性の意識についてあまり触れませんでしたが、どうだったのでしょうか?」明治期に日本人の性意識・性行動には、西洋から根本的に異質な要素が入ってきますが、それは学校教育や雑誌メディアなどを通じて普及していくので、初等教育しか受けられない層や、文字文化に接触のない層には、江戸時代までの開放的な性意識・性行動は残存していました。明治期には、異性とキスをしてしまった未婚女性がもう結婚ができないと悩むということも起きますが、一方「夜這い」も地方によっては昭和30年代まで残っていたそうです。明治~終戦ころは、新旧の性意識・性行動が混在していた時期といえます。
●「親たちが性に対し、子どもたちに隠そうとする理由は何でしょうか?」
子どもは、大人の世界の汚れを知らない「無垢な存在」である、という子ども観が、まず西欧18世紀に誕生し、それが明治維新後の日本に導入されていきます。それ以前の子ども達は西欧でも小さな大人とみなされ、大人の猥談、お酒の席などに混じっているのはごく普通のことでした。有名なフィリップ・アリエス『<子ども>の誕生』みすず書房 でこの発見が語られています。現在もこの子ども観が続いているのだといえます。
●「90年代以降に起きた性行動の鈍化が日本独特である点は、もしかすると、情報技術の発達以外にも原因があるのではないだろうか。というのも、情報技術の発達は日本だけではないからである。また女性の性感の鈍化は、その原因がはっきりしていない点があるので、まだまだ調査が必要ではないだろうか。」
鋭い指摘だと思います。まったくそのとおりだと思います。IT化が共通に進んでいる先進国において、少なくとも西欧では、性行動の鈍化は起きていないと見られますし、大人の幼児体型や草食系の増加なども見られないようです。私の現在の仮説をおおまかに述べますと、同じ情報技術の発達が、身体構造の社会的相違により、異なった影響を身体に与えているのではないかと考えています。西洋人たちは、ロゴスとエロス、頭脳と性的身体の拮抗対立を、歴史的に長期に亘り経験してきました。ですから、IT化で頭脳を情報処理のために多用しても、それに拮抗対立する性的身体は衰えないのだと思われます。日本では、頭脳と性的身体という拮抗対立を伝統的にもたなかったため、頭脳重視に重点が移ると、性的身体そのものが重点を奪われて衰弱しているように見えます。今後もさらに実証研究していきたいテーマです。
●「先生はセフレは認めることができますか?」
「夫婦」「恋人」「不倫」「内縁」「セフレ」など、外形的にカップルがカテゴリー分けされることがありますが、その関係の内実は同じカテゴリーの中でも、非常にさまざまではないでしょうか。「夫婦」=よい異性関係 「セフレ」=悪い異性関係 というように外形で評価することはできないと思います。セフレの中にも非常に充実した関係はあると思います。
●「恋ができません」
過去に何か痛手を負ってしまったのか。理性が非常に強くてそれを揺るがすことを避けようとしているのか。まだこの人だ、という人物に出会っていないのか・・・。これは大事な問題としてかかえ、どうぞいろいろな面から見ていってください。
●「先生はなぜ身体コミュニケーションを研究しているのですか?またなぜ大学生の前でこの話をしようと思ったか意図を教えてください。」「質問なのですが、日本は外国に比べて身体コミュニケーション力は劣るのでしょうか?」
現在の日本人のコミュニケーション不全状態に、私は強い危機感をもっています。多くの若者が、コミュニケーションが苦手で、人と接するのが苦手、人がこわい、ひいては、ひきこもりなどになって苦しんでいます。日本人のコミュニケーションがどのように変れば、コミュニケーションが苦でなくなり、多くの人が他者ともっと楽に接するようになれるでしょうか?
日本人のコミュニケーションは伝統的に、言葉ではっきり表現するバーバルコミュニケーションよりも、言葉にださずに以心伝心で察しあう、つまり「身体コミュニケーション」が重視されてきたといえます。日本の伝統的な身体コミュニケーションが、現代においてどう変化すべきかに、私は関心をひかれています。
大学生への広い意味での性教育が必要だと考える理由は、授業でお話しましたし、このNEWS欄の11月10日づけの頁にも授業スライドを掲載しています。そちらを見てください。
●「日本は長寿国ですが、性行為の回数と関係があるのですか?」
長寿国なのは、諸外国よりも性行為の年間回数が少ないから、例えばエネルギーをロスしないので長寿になる、ということの真偽を尋ねているのでしょうか?残念ですが、その研究はないと思います。興味深い疑問ですね。
●「性に関して自分の体験をおおっぴらに語る人たちをみると、とても下品だと思ってしまうのですが、自分は異常なのでしょうか?」
おおっぴらに語っても明るくて不思議と品を失わない人もいますね。おおっぴらでなく語っても下品な人もいます。性にどれだけ神聖なもの、美や幸せの価値を見出しているかで、品のあるなしが変ってくるように思います。そういう区別をわかるのは大事ではないでしょうか。しかし、性的な話題は一様に下品だと嫌がる人もいますね。質問者はこの後者ですか?そういう潔癖な感覚は大学生くらいの年齢ではちっとも異常ではないと思います。性的なことに接する機会が増えるにつれ、おのずと慣れて変ってくることが多いです。
●「セックスが身体と心に大きな影響を及ぼすのは確かだと思う。心の面での幸福感などは恋愛から得るものとも考えられて気づきにくいけれど、身体の面ではすぐに出る。特に女性はそうだと思う。現に私も恋人との定期的なセックスによって月経不順が治った。この授業でその根拠や理由がわかった。すごくおどろいた。」
●「セックスはしていても、彼女に生理不順が続いています。他になにか原因があるのでしょうか。」
本来女性の骨盤は、月の満ち欠け、潮の満ち干と連動して、月に1度開閉をするという、実に自然のリズムをよく反映したものでした。現代女性は頭と目の緊張が強く、骨盤まで緊張して、本来のスムーズな動きが妨げられています。生理不順の人はまずは、できるだけ頭と目を休めて、ゆったりぽかんと自然のリズムに任せる時間を大事にしてください。
●「私の彼女はエッチな話を嫌い、話だけでなくそういう行為をしようと誘ってみても断られます。強引にして嫌われたくないのでその問題については触れていないのですが、時間がたてば解決するのでしょうか?」
初体験の印象はあとまで影響しますので、決して彼女に無理強いしないのがよいと思います。エッチな行為というより、手をつないだり、肩に触れたりなど、穏やかで優しい身体コミュニケーションを二人で楽しんではと思います。
●「ラブプラスという恋愛シミュレーションゲームが、「中毒性がある」と話題になっているが、それについての考えを聞きたいです。」
そのゲームは未だ見たことがありませんが、シミュレーションゲームでリアルな恋愛に近い体験ができてしまうと、現実の恋愛関係、生殖行動からは遠ざかります。特に第二次性徴期をそのようにして過ごすと、性行動のための身体機能が育たないので、現実の恋愛、生殖からは撤退することになりがちです。また、身体機能に比べると、第二次性徴期後も成長の可能性はあると思われる、カップリングのためのコミュニケーション力や行動力も、シミュレーションゲームでは育てることができないと思われます。
第二次性徴期に性的機能を育てた(腰椎のカーブがしっかり形成された大人の腰)人、またコミュニケーション力や行動力のある人が、このようなゲームをして、しばらく熱中することもありますが、そういう場合はじきにゲームでは物足りなさを感じて、おのずと飽きてゲームをやめていくものです。現実の恋愛、生殖から撤退したくなければ(撤退してもよい場合は別です)、特に第二次性徴期には、この種のゲームからは距離をおくことが必要だと思います。
●「日本ではセックスレスが問題になっているが、海外ではどうなのか?」
海外ではこの問題はきいたことがありません。セックスレス状態でカップルを維持することなく、離婚、離別する社会が多いでしょう。
以上簡単にお答えしました。
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